何が一番恋しいかって 朝 君の隣で目覚めること 暖かな 風と 光と 君の笑顔が 好きだった 雪の所為で視界が悪い。足は寒さで感覚がない。 それでも我々は前に進まなければならない。大和へ、帰るために。 体が震えていた。寒さの所為だけではない。我々三人を取り囲む大勢の鬼達の目は獰猛で、その体をつくる筋肉は隆々としていて、止まることを知らず成長しすぎてしまった怪物のようだった。彼らにはこの激しい吹雪も応えていないだろう。 震えは、恐怖からか、それとも武者震いか。どちらでも良い。例え恐怖があろうと、我々はここから引き下がることはできない。 長い沈黙だった。その間私は呼吸をすることを忘れていた気がする。我々を取り囲んで、未だ動き出そうとしない鬼達の凶暴な笑みが不気味だった。 私の前で剣を構えていたサダルが、警戒の視線を緩めずに一歩下がった。私の肩にそっと手で触れ、サダルが振り返る。そして、言った。 「一緒に、帰りましょう。大和へ」